隙間の家





 

隙間の家

都内の密集住宅地に建つ木造 2 階建の住宅の計画。
敷地は新たに指定された「新防火区域」であり、木造 2 階建住宅も準耐火建築物とすることが義務付けられた。
この防火性能をきっかけとして都市木造のあり方を再考することにした。
周囲は防火性能を確保するための外壁仕様と開口部の制限のために内部をほとんど伺うことのできない家並みが続く。街を構成する住宅の多くが木造でありながら、その木架構はほとんど街並みにあらわれない。こうした内外の隔ては、その地域に実際に内包する生活の多様さや物理的要素の多さに比して、小さな表面積、奥行の浅い街並みを形成している。
そこで街をかたちづくる骨格である木造躯体が、街並みに対する耐火性を持ちつつも開かれていくことで都市の奥行の深さにつながるのではないかと考えた。
この計画では外壁耐火により屋内の軸組をあらわしとする「準耐火建築物(ロ-1)」とし、あらわしの架構と被覆された架構の間に必要な絶縁を物理的に拡大することで「隙間」として空間化することにした。 構造的な絶縁を肥大化した物理的な隙間が、各室の隔たりや階の違いを奪胎する。
分厚い外壁にぱかっと開けられた、道路に面して 2 層にまたがる大きな開口からは、あらわしの架構が街並みに参加し、その隙間は街と住宅を調停的につなぐ縁側となる。 住宅各所や街との関係性は独立性と相互性を合わせ持ち、耐火被覆の裏に隠されていた木架構 は街に対してあらわしとなり、豊かな都市の奥行をつくるのではないかと考えた。
 
用途:店舗併用住宅
 
敷地:東京都
 
敷地面積:71.08㎡
 
建築面積:48.54㎡
 
延床面積:89.76㎡
 
階数:地上2階
 
構造:木造
 
竣工:2017年7月
 
写真:長谷川健太
 
media:architecturephoto japan architects